前回に引き続き、今回は湿式製法について詳しくご説明していきたいと思います。1995年に、屋根材にアスベストを使用することが法律で禁止され、アスベストを含まない屋根材が多数開発されました。
これらの屋根材は、アスベストを含んでいないので人体にはやさしいのですが、経年劣化が激しいという報告が相次いだため、現在では製造されていません。この屋根材の製造方法が湿式製法なのです。
屋根の湿式製法とは?
湿式製法とは、セメントや石綿等の原材料を水に分散させて液体状にし、紙をすくようにして、薄い板を数層に重ね上げて成形してプレスする製造方法です。液体状にしたものを脱水しながら抄造するため、繊維が分散されて安定した品質になるというもの。
しかし、経年劣化と共に、この層の部分が剥がれ落ちてしまう(層間剥離)という不具合が多く見られるようになったのです。層間剥離とは、ミルフィーユ状になっている屋根の表面がボロボロと剥がれてくる現象で、屋根の下端部分から白くなって剥がれてくることが特徴です。
層間剥離が進行すると、屋根の内部に雨水が侵入して釘の腐食の原因にもなります。釘が腐食すると屋根にわずかなズレが生じ、それに気づかず放置していたら屋根の落下にもつながる危険なものです。湿式製法では、材料に軽量なパルプ繊維などを使用しているのですが、パルプ繊維は、ひび割れを防止する効果は高いものの、水分を含みやすいという特徴があるため、膨張と乾燥を繰り返すことで、経年に伴う劣化や腐食の進行が早まるのです。
また、パミールをはじめとする湿式製法で製造された屋根材は、塗装によるメンテナンスを行うことができません。というのも、層間剥離が起こると屋根の塗装にはつきものである高圧洗浄を行うことができないからです。仮に高圧洗浄を行わず塗装したとしても、屋根材と塗料が密着しませんので、すぐに剥がれてしまいます。メンテナンスを行う場合は、既存の屋根を残したまま、その上に新しい屋根を載せて覆う「カバー工法」、もしくは既存の屋根を剥がして新しい屋根材に置き換える「葺き替え」を行います。
パミールに限らず、湿式製法で製造されたアスベストを含まない屋根材は、どのメーカーの製品でも強度不足が見られます。それらの屋根材のほとんどは1996年~2008年に製造販売されたものなので、その時期に住宅を建てたという場合は、一度弊社のような塗装専門業者に相談して調査してもらい、住宅の現状を把握しておくと良いと思います。